積算評価③ 物件の評価額と融資可能額の関係
これまでに、土地と建物の評価額の求め方を説明してきました。
今回は、物件の評価額を求めて、実際に融資可能な金額を考えます。
物件の評価額
引き続き、下のような物件資料を元に計算を行います。
物件の評価額は、単純に建物と土地の評価額を足したものになります。すなわち、前回と前々回の計算結果から
物件の評価額:(土地 3966万円) + (建物 4936万円) = 8902万円
約8900万円がこの物件の評価額となりました。
評価額まで貸してもらえるのか?
可能性はあります。ただし、ほとんどの場合、これを下回ることになります。なぜ評価額を求めるかといえば、担保としての物件の価値を概算するためです。どんな場合でも、この評価額で間違いなく売れると銀行が考えれば、評価額まで融資することは可能です。
しかしながら、評価額以上で売却できることは稀です。通常は、2~3割安い値段で売れると想定し、この評価額に7~8割の掛目を入れるのが普通です。例えば、8900万円の評価が得られた物件でも、その7~8割の6000万円~7000万円の融資額にとどまることになります。
評価に影響する他の要因
土地の評価額は、公示地価をもとに計算しました。住宅地の場合、公示地価は戸建を建てたり購入したりする場合の土地の値段です。同じ面積でも極端に細長い土地や、土地に到達するために細長い通路を通らなければならない敷地延長物件、すなわち旗竿地と呼ばれる土地は、公示価格よりかなり安く取引されます。この場合、評価は下がります。
また、ゴミ処理場、火葬場や墓地などの禁忌施設がある場合も評価は下がります。要は、万が一物件を売却しなければならなくなったとき、売れる価格というのが評価額の考え方なのです。
銀行による考え方の違い
掛目の入れ方は、銀行によって異なります。首都圏で賃貸需要が堅いとみれば、掛目を減らし評価額に近い額を融資することもあります。また、人口減が明らかに予想される地方の物件など、高い評価が出ても5割などの大きな掛目を入れることもあります。
また、土地として処分することを念頭において、入居者の立ち退き費用をマイナスする銀行もあります。この場合、掛目を入れて、さらに立ち退き費用として、3か月程度の家賃を評価額から引きます。
地方銀行の場合は、ある程度ルールに則った評価を行いますが、信用金庫や信用組合などは、融通が利く場合もあります。また、景気にも左右されますし、支店によっても異なる場合があります。この辺は、物件を定期的に持ち込んで実際に銀行の担当者とやり取りをしてデータを集めていくしかありません。